桜が求めた愛の行方
『真斗を見ているとわかるんだ、
あいつは親父の言わんとすることを
理解して行動しているって。
でも俺は言葉の意味がわかっても
それを理解してはいなかった』
『なるほど、何となく言いたい事わかるよ
俺も結局は親父の道を選らばなかった
からな……』
『だからかな、むしろ真斗が継ぐ事になって
良かったと思っている』
『じゃあ、さくらちゃんの為に無理して
変わったんじゃないんだな?』
『ああ』
『俺はさ、夏音《かのん》を名実ともに
自分のものにしたかった。
結城を名乗らせたかったんだ。
入籍した日に俺の妻だと満足したのを
今でも忘れないな。でもおまえは逆
だな、藤木勇斗になって満足した訳だ』
『そう、だな……』
このとき自分でも不思議とそれをすんなり
受け入れていた事に気づいた。
考えてみればおかしなものだ。
婿養子と言えば、形見の狭い思いをしている
というのが世間的なイメージだというのに。
俺は藤木に入るときも、入ってからも、
まるで抵抗はなかった。
じい様の考えも、亡くなった要人さんの考えも言葉だけでなく理解できるから楽しい。
『さくらちゃんの事も自然に
受け入れたんだよな?』
『そうだな』
さくらの事は、偽りの婚約をしていた時
ですら抵抗はなかった。
むしろ惹かれる一方で、美那の事を思い
暴走する気持ちを押さえていたほどだった。
やはり俺は、こいつらが言うように
ずっとさくらが好きだったのだろう……
くそっ。
『勇斗、おまえさ、
ちゃんと愛してるって言ってるか?』
『はっ!?はあ?
おまえ何言ってんの?』
『なるほどね』
はあーっと蒼真は深くため息をついた。
『根本的な原因はそれだよ』
『おっおまえは夏音に言ってるのか?』
『当たり前だろ、毎日言ってる』
『マジか!』