桜が求めた愛の行方
『おまえなぁ、釣った魚にエサはやらない
 とか言ってると本当にさくらちゃんに
 棄てられるぞ?』

『んなこと……言葉は不用だろ?』

『夏音にそれ言ってみろ、間違いなく
 刺されるぞ』

『さくらはそんな事言わなくても……』

『ならば聞くが、おまえさくらちゃんに
 愛してるって言ってもらってるか?』

『………』

勇斗の青ざめていく顔を見た蒼真は
ニヤリと笑った。

『女は言葉に出して言わないと、
 不安になる生き物らしいからな。
 さくらちゃんは強がりな所があるって
 夏音が言ってたな。
 とりあえず、を受け入れたのも、
 それを許したのもおまえの事が
 好きだから、愛してるからだろ?
 なのに、愛してるって言われてなければ
 おまえから離婚を言われたら受け入れる
 だろうな』

そういえば……
俺を名前で呼ばなかった理由もそれだった。
そんな馬鹿な……

『蒼真、あの外人はゲイだった』

『はっ?!』

『真斗も知ってるやつだった』

『おまえ、間違いなく地獄行きだな』

『わかってる!もう遅いってことも・・・・』

『何が遅いんだ?』

『さくらは俺を赦さないだろう』

『まったく、何にもわかってないんだな
 なあ?さくらちゃんは
 何で出て行かずに家にいるんだ?』

『それは……』

まだ俺の事を好きだからと、
俺を思ってくれていると考えて
いいのだろうか?

『なあ、なぜもっとよく話し合わない?』

『まともに話し合えると思えないんだ』

『なんで?!』

『触れずにはいられないから……』

『は?おまえやっぱり本物の馬鹿だな』

蒼真はさも悲しそうに首を振って、
《このことは零士と崇には黙っててやる》
というやいなや、瞳を閉じた。

どこでどう、間違ってしまった?
言うまでもないな……
嫉妬という、今まで知らなかった感情に
自分を見失ってしまった。

さくらを愛している
たぶんずっと前から……
そしてこれからも……

ー見えない答えはすぐそこにあるものだー

昔、要人さんに言われた言葉が
急に心によみがえった。

蒼真の言う通りだ。

俺は本物の馬鹿だ。


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