桜が求めた愛の行方
14.愛してる
ここ数日は、さくらとまともに顔を
合わせていない。
俺の態度がどうであろうと、さくらは
変わらない生活を続けようとしていた。
ただし避け続ける俺に
帰りを待つことはなくなってしまった。
本当にさくらは俺を
愛してるいるのだろうか?
もし蒼真の言うことが正しいなら、
何の為にこんな我慢をしているのだろう。
飽くことなく抱いていた存在が
すぐそばにいるのに、触れることすらできない
地獄はいったい何の為だ?
自分の家のドアを開けるのに怖じ気づく
なんて情けない男だと思うが、
このドアノブを掴む度に、今日こそ彼女は
出て行ってしまったと思うと覚悟がいる。
勇斗は思い切ってドアを開けた。
まだ7時を過ぎたところだというのに
カーテンも閉められ、家の中は真っ暗だ。
『さくら……』
ここに越してきてから、二人の寝室にしていた部屋を見つめた。
『間に合わなかったか……』
部屋からは物音ひとつしない。
ドアノブにかけた手を下ろし自室へ向かった
心の中に大きな穴が空いた。
そこに入ってくるのは喪失感だけ。
『………?』
扉を開けると違和感を感じた。
その場に立ち止まり、電気を付けず
暗闇に瞳が慣れるのを待つ。
ベッドの上に塊がある。
なぜだ?
疑問が心震える喜びに代わるまでに
時間はかからなかった。