桜が求めた愛の行方

16.戦う強さ

勇斗の嫌な予感は肩透かしをくらった。
どうやら、パリコレで活躍するモデルは他にもいたらしい。

試着した隣に立つ、背が高くそして
口にするのはサプリメントのみのような
細い彼女は、美那ではなかった。

『藤木専務が引き受けてくださって
 本当に助かりましたよ!』

鈴木は手を擦り合わせて 近寄ってきた。

『鈴木さん、本当に私でいいのですか?』

『いや~正直私も半信半疑でしたが、
 こうしてタキシード姿を拝見したら
 間違いないと確信しましたよ!
 実は釣り合う相手を探すのに苦労しまして
 今後のこともあるので、無難な人選より
 主催者だと言う方が、納得されそうで』

『そう言うことでしたか……』

『それにしても、専務はさぞやおもてに
 なるのでしょうね~新婚の奥様を
 泣かせてはいけませんよ』

ちっ、余計なお世話だ。
勇斗は内心で悪態をついた。
こんな事になるなら、初めから京子先輩の
頼みを聞いて、さくらの相手になれば
よかったと今更ながら後悔する。

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