桜が求めた愛の行方


『どうしてここに?』

さくらは勇斗の腕の中から顔を上げた。
眉間に優しく指があてられる。

『今日ここに来たら、俺の相手が美那だと
 知らされたんだ。さくらもここに来ている  のは知っていたから、誤解される前に
 自分の口から説明をしようと思って
 探しに来たんだよ。
 そうしたら、怪しい男がそこで
 立ち聞きしてたんだ!!』

『違うよ!ベイビー、野蛮な男がさ
 いきなり僕の胸ぐらを掴んだんだよ!』

『さくらをベイビーって呼ぶな!!』

『そっちこそ、いつまでそうしてるんだよ
 彼が目のやり場に困ってるだろ!なぁ?』

話の矛先が自分に向けられて真島が
目を白黒させた。

『いっいえ、僕は……』

『ニール、真島君にちょっかい出さないで』

『なに?!真島こっちへこい』

『ちぇっ』


もう真島は何が何やら訳がわからなかった。

専務の相手モデルが、昨日とは変わるので
これを見せろと室長に資料を渡されて、
その通りにしたら、急に専務が走り出した。

慌てて追いかけてきたら、流暢な日本語を話す外人と喧嘩を始めてるし。
それを止めようとしたら、中から専務の
美しい奥さまの叫ぶ声がして……
現在に至る。

ニールって人の言葉じゃないけど、
こんなドラマみたいな事が現実にあるなんて
しかも自分も渦中にいるなんて
もう笑うしかない。
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