桜が求めた愛の行方
男はメールを見て、
激しい怒りを押さえるために
前の椅子の背もたれをきつく握りしめた。

さもなくば、並べられた椅子を片っ端から
蹴りあげたい衝動を押さえられなかった

あの女はもういらぬ!
二度も失望させられるとは!!
キャリアごと潰してやる。

落ち着くんだ、冷静にならねば。

念を押そうとしたスキャンダルがなくとも、
このホテルが立ち直ることはないはずだ。

だが明日、万が一このイベントが成功すれば
何かが起こるかも知れぬ。

奇跡を信じずとも、油断は大敵だ
その苦味は3ヶ月前に味わされた。

どこでこうなった?
あの若造が気づいたのか?

首筋にちりっとさす視線を感じて
男は振り返り、舞台の袖口に立つ陰を見た。

椅子を握りしめていた手が白くなる。

あの忌々しい秘書め!!

いいだろう
お遊びはここまでだ

俺が本気になれば、お前達など容易く
潰せる事を思い知らせてやる

男は手を緩め、優雅な仕草で立ち上がった。

戦いはこれからだ。

やるべき事はわかっている。
最終手段も踏まえてそれを実行するだけだ。



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