桜が求めた愛の行方
『ふむ、この年になっても誉められるのは
悪くないものじゃ』
会長は祖父の顔になり、にっこり笑った。
『すみません……』
『謝る事はない、わしが結婚した時には 元々の藤木の株は全て妻の名義だった。
わしはいわゆる、逆玉じゃな』
『逆玉って……』
『ばあ様は要人が結婚した時に、遺言書を
書き換えおって、要人に3分の1しか
譲らず……よって、それは今のところ
さくらのものだな、あとは全部嫁いだ
娘の雪絵または、その息子に譲るとして
ある』
『なんですって!?』
『そうじゃ、ばあ様が生きておるうちに
また書き換えない限りそれは副社長が
持つことになるということだ』
『マジかよ……』
副社長はカチカチの保守派で、それこそ
昔のじいさまの頃のままやっていけば
いいと言う考えだ。
それはイコール軽井沢を成功させて
他の株主達を納得させなければ、
その先が危ういということ。
自分達さえよければ、犠牲が伴う縮小など
何とも思わない副社長派に勝たなければ、
俺達の藤木に明るい未来はないのか。
『勇斗や、のるか?』
『もちろんです!』
降りられる勝負じゃない。
田所を始めとする従業員の為、
そして自分とさくらの将来の為にも。
『わしはおまえに全面的に協力する』
『ありがとうございます』
『それともうひとつ……』
『なんでしょう?』
『孫を……さくらを頼んだぞ』
『はい』
勇斗は力強くうなずいた。