桜が求めた愛の行方
2.隠された大きな秘密 ①
『はい、わかります。では明日銀座で……
え?それは……あっ』
トキオの庭園を歩きながら
さくらは深いため息をついて
田所からの電話を切った。
よりによって軽井沢なんて……
軽井沢にはいい思い出がたくさんある。
お祖父様との乗馬に両親とのテニス、
おばあ様と野の花を摘み押し花にしたり、
満点の星空を仰ぎながら見た花火……
あそこは、私にとって家族の思い出が
詰まった大切な場所。
そこに行くのを躊躇う日がくるなんて。
田所さんの言うことはわかる。
もちろん、軽井沢を立て直すのに
必要だと私にも頭では理解できている。
でもよりによって何故……
《これもまた運命なのかも知れませんね》
そんな風に言って電話を切った田所。
まったくあの人は、いつだってお見通し
なのよね、悔しいけれど。
運命か……そろそろ覚悟しなければ
いけない時が迫っているのかもしれない。
わかっていたことじゃない。
パリに彼が来たときから
運命の歯車は回り始めていたんだから。
さくらは目の前の桜の木陰に入り
木の根に腰を下ろすと爽やかな風を
頬に受けながら、半年前を思い出した。