桜が求めた愛の行方

バタンとドアが閉まって、部屋中が
静まり返っている。

さくらの耳には時計の秒針がコツコツと
時を刻む音だけが聞こえる。

手の震えが収まらないまま、
封筒を開けて中から二枚の便箋を出した。

唇を硬く結び広げると、
懐かしいパパの字に胸が張り裂けそうに
なる。
潤む瞳を何度もまばたきして読み始めた。

さくらへ
こんな手紙を書くのは馬鹿げていると
自分でも思うが、もし万が一にも
自分に何かがあって、おまえに伝えられ
なかったら死んでも後悔し続けるだろう。
だからこうして筆をとっている。
そしてこれを田所から渡されて
読んでいるということは、
パパの勘もまんざらじゃないだろう?

『パパ……』

一瞬にして優しいパパの顔と想い出が溢れ
胸がいっぱいになる。

続きを読むまでに、
しばらくかかってしまった。
さくらは意を決して、続きを読み始めた 。
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