桜が求めた愛の行方
『では真斗様もその時に?』
『ええ。まーくんとはあの日一緒に
映画を観に行く約束をしていたの。
私がどうしても観たいって試験中なのに
無理矢理誘って……』
どんなに後悔してもあの日を取り戻せない。
まーくんを巻き込んでしまったのは私。
『そして、あの人はその後こう続けたわ
《血の繋がった本来の後継者である
勇斗君が藤木を継ぐのだから
問題はないじゃない。
結婚するまでの少しの間でいいの、
あの人に父親として過ごさせてあげて。
あなただってこれで良かったと思って
いるのでしょう?
自分の血を分けた息子である真斗くんに
継がせることが出来て》
二人とも音を立てずにその場にいるのが
やっとだったわ』
実際はそんな生易しいものではなかった。
まーくんは青ざめた顔で震えていたし、
私はその場で吐いてしまった。