桜が求めた愛の行方

『それであなたはパリへ?』

『そうよ』

さくらは手紙を抱き締めた。

『私の父は藤木要人ただ1人、
 そして私が藤木を継ぐ権利はないの』

『さくら様……』

『さあこれでも、
 私に戻って藤木を助けろと?』

『そうです』

『どうして?!』

『今度は私の話を聞いてください。
 そもそも、さくら様の婚約は
 どうして急に進められたのかは、
 ご存知でしたか?』

『いいえ』

田所はかいつまんでこれまでの
藤木グループの状況を話し始めた。

会長と社長の知らない間にできた確執、
社内の分裂、内紛に発展しようとした時に
社長の事故が起きてしまったこと。

『あの時、社長側は私をあなたの婚約者に
 する手筈が整っていたんです』

『えっ?』

『実は社長はもし勇斗様に別の相手が
 いた場合に、私にさくら様を頼むと
 一筆書いておられました』

『嘘っ!!どうしてそうしなかったの?
 彼には……』

『私がお断りしたからです』

『え?あっ、そうなの……そうよね
 あなたにだって選ぶ権利はあるわ』

『そうじゃない!!
 別に今からだって私はあなたと
 結婚してもいいと思っています!』

『それは……』

『でも、私には藤木グループを継ぐ事は
 出来ません。
 社長の想いを知ってしまったから』

『パパの想い?』

『はい……
 この話をするのは凄く躊躇いました。
 こうした今でも迷ってしまいます。
 でもさくら様、
 あなたならきっと理解してくださる、
 そう思うので思いきってお話しします』

『何か覚悟した方がいい?』

『いえ、ただ受け止めて下さい』

『わかったわ』

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