桜が求めた愛の行方

『……………………わかりました』

長い沈黙の後、さくらは静かに言った。

『さくら様?』

『どうせ、お祖父様に誓約書を書かされて
 いるのよ、25には結婚するって。
 それに昨日どうしてかしら?
 ビザが通らなかったのよね』

『それでは?』

『すぐには無理だけど、整理をして
 準備ができたら日本に戻ります。
 ただし彼が私と結婚するって言うかは
 保証しないわよ!』

『この世の中で、あなたと結婚しない
 なんて言う男はいませんよ』

『あら?目の前にいるじゃない?』

『え?いや、私は……その……』

いつだって真面目な印象しかない田所が
焦るのを見て、さくらは笑った。


そうして色んなわだかまりとしがらみを
抱えて、さくらは日本に戻ってきたのだ。

あれからもうすぐ半年……
あっと言う間にここまできてしまった。

あの時、こんなにも勇斗を愛してしまうとは
想像もしていなかった

『運命か……』

さくらは口に出して呟いた。


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