桜が求めた愛の行方
『ごめんなさい、一緒に行くわ』
はあーと長い息が髪にかかった。
『何かあるなら言えよ、一人で悩むな』
涙をぐっと堪えて、腕の中で彼を見上げた。
『ありがとう』
『ったく、そうやって笑えば
俺が何も言わないと思ってるだろ』
『そんな事ないよ』
背伸びして、たくさんのごめんなさいを
込めてキスをした。
『それだけ?全然足りないけど』
彼は少し怒った顔をして唇が重ねられた。
伝わってくるのは不満と苛立ちと……
いたわり。
次第に激しくなる口づけは、そのまま
アイランド型のキッチンの作業台の上に
押し倒される。
いつになく性急に求められて、
身体の反応に頭がついていかない。
彼はこれ以上理由を聞かない代わりに
身体で答を求めようとしている。
『だめっ……』
すっかり彼の愛撫に慣らされた身体は
言葉の拒否とはほど遠い反応をしている。
『ここはダメだって言ってないけど?』
低い声で囁かれると全身がカッと熱くなる。
『違うの……ここでは……』
唇による執拗な甘い責めに抵抗力が
奪われていく。
彼の行動に驚き、起きあがろうとしたが
すでに遅かった。
『やっ…むりっ……』
彼が入ってきたと思ったら、
そのまま抱え上げられた。
『さくら、おまえにはもう俺だけだろ?』
『んっ、ゆうとだけ…だよ…』
不安定な状態で突き上げられて、
彼の首にしがみつく。
『おまえがどうしても嫌なら俺もやめる』
『ダメよ…あなたは行かなければ……』
『無理して欲しくないんだ』
『してないわ…私もあなたと離れて暮らす
のはいやだもの…だから…あっ…』
『本当に?』
答える代わりに、いつも彼がしてくれるように気持ちを込めて唇を重ねた。
舌を深く絡ませ吸い上げる。
ずっと避けていられることではないのは
わかっていた事。
覚悟を決める時がきたんだわ。