桜が求めた愛の行方
『さくら!』
慌てて彼が追いかけてくる。
『信じられない』
『さくら……』
『来ないで!』
涙目でぷいっと顔を背けて
スカートを直していると、腕を掴まれて
ぎゅっと抱きしめられた。
『悪かったよ、ちょっと調子に乗った』
『そうよ!キッチンであんな事するなんて
信じられないんだから!』
『へ?場所の問題だったのか?』
拍子抜けした顔で、私の顔を覗き込まれる。
『なんだと思ったの?』
『その……体勢とか?』
『なっ!?』
『なんだよ!誘ったのはおまえだろ?』
真っ赤になる私を面白そうに見るから、
余計に恥ずかしくなる。
『誘ってなんかない』
『たまには違う場所も刺激的で
よかっただろ?』
そう言ってちゅっと口づけられる。
『知らない!』
『そんなに拗ねるなら、ご希望通り
ベッドでしよう』
『やだ、やめて!ちょっと!荷物みたいに
担がないでっ!』
『さくら。それ以上暴れるならキッチンに
戻るけど?俺はあそこ気に入ったから』
びくっと大人しくなると、彼は笑って私を
下ろしてから、抱き上げ直した。
『うん、確かに。こっちのがいい眺めだ』
ハッとして、服の状態を思い出し
胸を押さえた。
『なに、その今さらな感じ?』
『もう馬鹿っ!!』
彼は爆笑しながら寝室の扉を開けた。
先の事ばかり考えるなと、
パパはよく言っていた。そうしよう。
今はこの幸せを大事にしよう。
さくらは軽井沢で待ち受けている
試練に立ち向かう覚悟を決めた。