桜が求めた愛の行方
『私にどうしろと?』
田所もまた苦しそうな顔をしている。
『さくら様を苦しめてしまうとわかっていて お話した私をお許しください』
『許すも許さないもないじゃない!
そもそもあなたがパリに来た時から
こういう事になるってわかっていたわ
そこにあの人が関わって来たのは
想定外だったけれど、
私だって頭ではわかっているつもりよ!
軽井沢の重厚でモダンな雰囲気に、
新しいけれどあのレストランはきっと
マッチするって』
まくし立てるように言って、ぶつける場所が
なかった怒りを発した。
どうしてあの人の店なのよ!
フレンチの店は星の数ほどあるというのに!
『はい』
田所はさくらの怒りを黙って受け止めた。
『雪成さんの本当の狙いはなに?』
『社長の座だと思います』
『当然よね』
『いま、株主達は軽井沢の再建に注目して
います。イコール藤木の将来、勇斗様に
注目しているという事でもあります。
このまま軽井沢が失敗すると勇斗様は
窮地に立たされ、やはり将来は副社長に
という地盤がほぼ出来上がるでしょう』
『わかりました』
さくらが悲痛な表情を押し隠してうなずく
のを見て田所もまた同じ表情になる。
『憐れむのは止めて』
『そんなつもりはない!』
田所は素の怒りを発した。
何故、彼女一人で背負うのだ!
どうやったらこの泥沼から助けられる?
もしかして要人様はこうなるとわかっていた
から俺に全てを話し託したのだろうか?
だとしたら、俺がそっちの世界に行ったら
覚悟してもらわねば。
『どんなつもりでも、そんな顔で私を
見ないで!!』
『さくら様………』
『あの人は雪成さんに付きそうなの?』
『いえ、それはまだなんとも』
『私の力が必要だとあなたが感じたら
すぐに知らせて。出来る限りのことは
するつもりだから』
『よろしくお願いいたします』
『彼は大丈夫?』
『はい、思った以上に部下達から
厚い信頼を得ています。私の同期達など
まるで要人社長が戻ったようだ、などと
言う者もおります』
『そう』
彼と暮らすようになったさくらは
もっと現実的な部分も気づいていた。
コーヒーを飲む仕草や笑った時の目尻の皺、
ふとした仕草がパパにそっくりだもの。
『田所さん……彼を守ってね』
田所は一瞬だけ天に許しを得てさくらの
手を握った。
『はい、勿論です』
あなたの事も護るつもりですから、
と心の中で付け加えた。
田所もまた苦しそうな顔をしている。
『さくら様を苦しめてしまうとわかっていて お話した私をお許しください』
『許すも許さないもないじゃない!
そもそもあなたがパリに来た時から
こういう事になるってわかっていたわ
そこにあの人が関わって来たのは
想定外だったけれど、
私だって頭ではわかっているつもりよ!
軽井沢の重厚でモダンな雰囲気に、
新しいけれどあのレストランはきっと
マッチするって』
まくし立てるように言って、ぶつける場所が
なかった怒りを発した。
どうしてあの人の店なのよ!
フレンチの店は星の数ほどあるというのに!
『はい』
田所はさくらの怒りを黙って受け止めた。
『雪成さんの本当の狙いはなに?』
『社長の座だと思います』
『当然よね』
『いま、株主達は軽井沢の再建に注目して
います。イコール藤木の将来、勇斗様に
注目しているという事でもあります。
このまま軽井沢が失敗すると勇斗様は
窮地に立たされ、やはり将来は副社長に
という地盤がほぼ出来上がるでしょう』
『わかりました』
さくらが悲痛な表情を押し隠してうなずく
のを見て田所もまた同じ表情になる。
『憐れむのは止めて』
『そんなつもりはない!』
田所は素の怒りを発した。
何故、彼女一人で背負うのだ!
どうやったらこの泥沼から助けられる?
もしかして要人様はこうなるとわかっていた
から俺に全てを話し託したのだろうか?
だとしたら、俺がそっちの世界に行ったら
覚悟してもらわねば。
『どんなつもりでも、そんな顔で私を
見ないで!!』
『さくら様………』
『あの人は雪成さんに付きそうなの?』
『いえ、それはまだなんとも』
『私の力が必要だとあなたが感じたら
すぐに知らせて。出来る限りのことは
するつもりだから』
『よろしくお願いいたします』
『彼は大丈夫?』
『はい、思った以上に部下達から
厚い信頼を得ています。私の同期達など
まるで要人社長が戻ったようだ、などと
言う者もおります』
『そう』
彼と暮らすようになったさくらは
もっと現実的な部分も気づいていた。
コーヒーを飲む仕草や笑った時の目尻の皺、
ふとした仕草がパパにそっくりだもの。
『田所さん……彼を守ってね』
田所は一瞬だけ天に許しを得てさくらの
手を握った。
『はい、勿論です』
あなたの事も護るつもりですから、
と心の中で付け加えた。