桜が求めた愛の行方

6.軽井沢


軽井沢にある藤木グランドホテル

昭和初期に建てられたクラシカルで
モダンな外観と、高原の緑に囲まれた
避暑地の安らぎ。
過去には多くのVIPを迎えたことがある
このホテルには本物の歴史がある。

だが、近年その重厚さは古さだけが目立ち
スキーやショッピングの観光地から
少し離れていることも影響し客足が
落ちていた。

ここに本格的な手を入れるのは、賭けだ。
失敗したら終わるのはホテルだけじゃない。

ロビーは工事の音が響いている。
勇斗はその直ぐそばで、仕事をしていた。

『出来るだけそのままだ!いいか!
 お前らが思うよりずっと価値ある柱だ!
 キズがつかないよう、気をつけてやれ!』

現場監督の佐藤が注意する声に、勇斗は
書類から顔を上げてうなずいた。
あの監督は大丈夫だ、こちらの意向をきちんと理解してくれている。

当初工事を頼んでいた業者が土壇場になって
キャンセルになった時には、どうなるかと
思ったが、崇の紹介してくれた新たな業者は
ひょっとすると、最初に契約した所より
良いかもしれない。
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