桜が求めた愛の行方
8.動き出した運命
男は山嵜をオフィスに呼び出していた。
大事なのは、自分のテリトリーだという事。
物事を有利に運ぶには、安定が必要だ。
思ったより頑固なこの男には
手を焼いていた。
だがそれも、ここまでだ。
山嵜は何のためにここへ呼び出されたのか
わからなかった。
同じ社内の人間に何故、会社の再建とも言える大きなプロジェクトを阻まれているのか?
『どうしても?』
『ええ、すでに着工されていますし
お断りする理由がありません』
それを聞いた男のすました顔が醜く歪んだ。
着工!まったくどこのアホ業者が
あの工事を請け負った?!
ストップしているはずの工事が
進められていると知った時の怒りが
再び込み上げてきた。
何かを投げつける代わりに
男はいつものコーヒーを飲んだ。
中身は砂糖の代わりに酒が入っている。
逆立った神経がなだめられた。
やはり自分のテリトリーが正しかった。