桜が求めた愛の行方

8.動き出した運命


男は山嵜をオフィスに呼び出していた。

大事なのは、自分のテリトリーだという事。
物事を有利に運ぶには、安定が必要だ。

思ったより頑固なこの男には
手を焼いていた。
だがそれも、ここまでだ。


山嵜は何のためにここへ呼び出されたのか
わからなかった。
同じ社内の人間に何故、会社の再建とも言える大きなプロジェクトを阻まれているのか?

『どうしても?』

『ええ、すでに着工されていますし
 お断りする理由がありません』

それを聞いた男のすました顔が醜く歪んだ。
着工!まったくどこのアホ業者が
あの工事を請け負った?!
ストップしているはずの工事が
進められていると知った時の怒りが
再び込み上げてきた。

何かを投げつける代わりに
男はいつものコーヒーを飲んだ。
中身は砂糖の代わりに酒が入っている。
逆立った神経がなだめられた。
やはり自分のテリトリーが正しかった。
< 181 / 249 >

この作品をシェア

pagetop