桜が求めた愛の行方


『お待たせして申し訳ありません』

勇斗が部屋に入ると、憔悴した山嵜さんがそこにいた。
もしかして、彼も苦渋の決断だったのだろうか?やはり副社長が何らかの手を?

『いや、こちらこそ……突然こんな話、
 本当に申し訳ないと思っている』

言葉の端に不本意さが滲み出ていると感じる
のは、俺が都合良くとらえているのか?

『本当にそう思われるなら、今一度
 考え直してもらえませんか?』

山嵜は彼の正面からの真っ直ぐな視線に
答える事ができずうつむいた。

『君には迷惑を掛けてすまない』

『理由を教えて下さい』

あくまで冷静に勇斗は対応する。
自分が感情的になったら
簡単に終わってしまう事がわかっている。

『理由は……気が変わったとしか言えない
 ここへ来て、やはり信念を貫き通し
 生涯一店舗、それにこだわりたくなった』

なるほど、そうきたか。
厄介だな。
薄々わかっていた事だが
それは条件で何とかなる問題ではない。

勇斗は考える時間が欲しかった。


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