桜が求めた愛の行方

とうとうこの日がきた。

落ち着きなさい!
さくらは自分の心に命令する。
意識して、息を吐き出した。
ハンドルを握る手が白くなっているが
何かにしがみつかなければ、高速道路を
無事に走り抜けられない。

買い物から戻った私の所に走ってきた
田所さんの顔を見れば、何が起きたかは
一目瞭然だった。

ついにこの時がきてしまったのよ!

大丈夫よ、さくら。
あの人とはDNA が共通しているだけ。
半分だけ同じ血が流れていても
25年間赤の他人だったのよ。
対面したからといって、何が起きるって
言うのよ?

こみ上げる想いを飲み込んだ。

嗚呼もう……
起きるに決まっているじゃない!!

すでに私は料理することが好きなのよ。
それは女性の大半がそうだとか、
きっかけがあれば誰でもそうなるはずとか
色んな理由をつけて、認めてこなかった
けれど、頭の片隅ではそれと同じ位、
遺伝子に組み込まれているから好きなのだ
というのも否定できないでいる……

ほんの些細な共通だろうとそれを見つけた
だけで、全てが変わってしまうかも知れない事にさくらは心底怯えていた。


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