桜が求めた愛の行方
時刻は午後11時5分、すでに待ち合わせ
の時間が5分過ぎている。
何度、腕時計を見たって針の進む速度は
変わらないし、妖精が現れて気がついたら
翌朝になっていた、なんて事もありえない。
さくらは、もう15分もそうして
扉の前でぐずぐずしていた。
これ以上こんな時間にうろうろしていたら
頭のおかしな女がいると通報されかねない。
いいわ、わかった、入ればいいんでしょ!
木の扉を押しかけて、その寸前で手が止まる
無理!!
やっぱり無理よ!!
踵を返して、通りの向こうまで一気に
駆け出した。
意気地無し!弱虫!臆病者!
心の中にいるもう一人の自分が嘲笑う。
ああ神様!もしここが人生の岐路だと言う
ならば、お願いです!
どうか私を正しい道にお導き下さい!
祈ったところで、そんなすぐに答えが
見つかるはずがない。
さくらは乾いた笑いをした。
さあ、これだけ狼狽れば大丈夫。
行くのよ、それしか道はないの。
背筋を伸ばした。
私にはやるべき事がある。
さくらは駆けてきた道をゆっくり踏みしめ
ながら戻り、覚悟を決めて扉を押した。