桜が求めた愛の行方


駐車場まで普通に歩いて、
車に乗り込んだ途端に、声を上げて
思いっきり泣いた。

何とかそれが収まると、思えばこの車で
私は泣いてばかりだと笑えてきた。

『最初から、あなたが一番安心できるって
 わかっていたのよ』

ハンドルをポンと叩いた。

勇斗に逢いたい

もう寝ているかな?
こんな時間に帰ったら、怒られるかしら?

ふと、助手席に置いた白い箱が目に入った。

店を出ようとしたさくらに、山嵜が
《いらなかったら棄ててかまわないから》
と強引に押し付けてきたものだ。

中身は何となくわかっていたので、
急に空腹感に襲われて、
おそるおそる開けてみた。

箱いっぱいのそれにまた涙が溢れてきた。

『どうして………』

並んだプチガトーは、大好きなチョコレートのものばかり。

震える手で一つ口に運んだ。

『もう!私のよりおいしいじゃない……』

今日は勇斗の所には帰れない。
さくらはザ・トキオへ向けてエンジンを
かけた。



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