桜が求めた愛の行方


さくらは明け方、嫌な夢に起こされた。
いつも背中に感じる温もりが恋しい。
ひんやりとした隣に寂しくなって
起き上がった。

昨日は結局ザ・トキオに泊まってしまった。
あんなボロボロの状態で勇斗がいる自宅
に帰るのは、とうてい無理だった。

帰り際、あの人はこれからも今まで通りだ
と言った。
本当にそうかしら?
何も変わっていないようで、心の中は
複雑な渦が回り始めている。

ダメ、上手く考えられない。

今は勇斗に逢いたい。
あの腕の中で、私は大丈夫だと安心したい。

今から仕度して出れば、彼の朝食に
間に合うかしら。

『きゃっ!』

さくらが急いでメイクをしていると、
マナーモードの携帯が床に落ちて
びっくりした。

開いてみると、着信メール1件。

Sub 遭難した
From  勇斗

キッチンは恐ろしい迷宮だ。
コーヒーを飲むには、どこから妖精が
でてくるんだ?

さくらは微笑んだ。
悪夢は簡単に取り払われてしまった。
一秒でも早く逢いたくて、
リップも塗らずにバッグを持って
部屋を飛び出した。





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