桜が求めた愛の行方
もしかしたら、まだ寝ているかも。
さくらはそっとドアを開けた。
自分の家なのに、まるで泥棒のように
抜き足差し足で廊下を静かに進んで
寝室の扉をそっと開ける。
『ただいま……あれ?』
ベッドはシーツが捲られてもぬけの殻。
『ゆうと?出かけちゃった?』
がっかりしてベッドに腰かけた。
『車、飛ばしてきたのに……
何よ、メールしてきたくせに出かける事
ないじゃない!外のより美味しいコーヒー 淹れたのに。
あーあ、朝ごはん一緒に食べたかったな 会いたかったのに……ゆうとの馬鹿!』
温もりを求めてベッドに突っ伏した。
『馬鹿はひどいだろ』
パッと起きあがって振り返ると、
扉に寄りかかってにやにや笑う勇斗がいる。
『いつからそこに?』
『可愛い奥さんの独り言が始まったころ?』
『信じられない!』
恥ずかしくてシーツに潜り込む。
『隠れるなよ』
ベッドが軋んでシーツがはがされた。
『おまえ、いつ向こうを出た?』
『知らない』
枕に赤い顔を突っ伏したままでいると
髪が優しくとかれる。
『おいで』
ゆるゆると振り返ると
蕩けるような笑みが腕を広げている。
迷わず飛び込んで、ぎゅっと腰に手を回してしがみついた。
すると、よしよしと頭を撫でられる。