桜が求めた愛の行方

12.不安


コーヒーの香りがして、
ようやく気持ちを落ち着ける事ができた。

正直、あんな風に求められて応えないなんて男としてどうかと思う。

でも、だからといってあのまま身体を
繋げるだけじゃいつもと同じだ。
いい加減、さくらが隠している事を
聞き出さなければ、見えない闇が
振り払えないほど大きくなりそうだ。

『そんな所にしまってあったのか』

っていうか、豆は手で引いてたんだ。
さくらのこだわりに改めて驚く。

『探すつもりなんてなかったくせに』

引いた豆をサイフォンにセットしながら、
くすっと笑われた。

『どうして?』

『だって、勇斗は面倒くさいこと
 嫌いだもの。一つ棚を開けて見つから
 なかったら買って飲もうとするでしょ?』

『隠しカメラがあるのか?!』

『いやね、ないわよ』

キョロキョロする俺を見て、硬い表情が
ようやく微笑んだ。

『さくら、何を不安になってるんだ?』

聞かれたくない事なのは、承知の上だ。
これまでは、いつか彼女の方からを
期待して後回しにしてきた。

今日は違う。
勇斗はとことん追い詰める覚悟をした。

空気を察したさくらは、表情を曇らせて
《別に》とカップを取りに行ってしまう。


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