桜が求めた愛の行方
どれくらいそうしていただろうか、
抱き締めた腕を外そうとすると、
きつくしがみつかれてしまった。
『さくら、喉かわいただろ?』
首はうなずくのに、離れようとしないから笑ってしまう。
『こら!離れないと水をもってこられ
ないだろ?』
『じゃあいらない』
掠れた声が言うから苦笑いする。
『昔から喉が弱かっただろ?
寝込まれたら俺が困るんだから、な?』
『自分でやる』
渋々腕を離して、立ち上がろうとした彼女を引っ張ってソファーに押し付けた。
『いいから座ってろ』
『どこにあるか知ってるの?』
ウォーターサーバーは目と鼻の先にある。
少しは落ち着いたみたいだな。
『言ってろ』
彼女の口に軽くキスをして、
コップを取りに行く。
『ほら』
『ありがとう』
飲み干したコップを受け取って
テーブルに置いて隣りに座ると、
さくらはすぐにくっついてくる。
それだけ不安にさせてしまった事に
自分の方が落ち着かなくなってきた。
『なんだよ、急に甘えん坊になって』
『ごめんなさい』
『いや、珍しいからずっとそうしててくれ』
『珍しいって……』
顔を上げて小さく笑った唇にそっと
キスをして、また腕の中に閉じ込めた。
不安になっているのは、彼女だけでは
ない。