桜が求めた愛の行方

『軽井沢どうなったの?』

何気なく言ったさくらの言葉にはっとした。

『おまえ、もしかして……』

『えっ?』

腕の中で、びくっと身体が強張るのを感じた。

『くそっ!!そう言う事か!』

離れようとする彼女をきつく押し留めた。

まったく、こんなにボロボロになるって
わかっていたのに、俺の為にすみれおば様と
話をしてくれたのか。

『さくら……今回は礼を言う。
 おまえのお蔭で助かったよ。
 だけど、二度とこんな事はしなくていい』

『ゆうと?』

明らかに動揺した大きな瞳に
内心で大きく舌打ちする。
あんなに避けている母親に、俺のために
頭を下げに行ってくれて……
それでここまで苦しめてしまったのか。

『無理をさせて悪かった。
 お義母さんの説得に山嵜さんは心を変えて
 くれたよ、軽井沢は大丈夫だ』

『えっ?』

大きな瞳がびっくりしている。

『違うのか?』

『ううん……それは良かったわ』

ほっとする彼女に、確かな違和感を感じた。

違うな。
何かがおかしい。
心にできた、もやもやとした塊が
薄黒く広がっていく。

『ゆうと?』

不安そうに見上げる瞳を、口づける事で
閉じさせた。

ダメだ……今はこれ以上は……。


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