桜が求めた愛の行方

『珍しいわね、あなたが迷うなんて』

『そんなことはありませんよ』

『そうかしら?あなたは自分を信じて
 真っ直ぐな所が、あの人に似ているのに』

『あの人?……誰の事ですか?』

訝しげな勇斗に、すみれは動揺した。

『えっ?あっ!お母さま!美咲さんによ』

『ああ……そうかも知れません』

『それで?お話しって何かしら?』

『さくらに何があったんですか?』

『あの娘がどうかしたの?!』

『いえ、何かあったではなくて
 何が、あったんですか?と、お聞き
 したんです』

『それはどういうこと?』

『ご存知だと思っていたのですが。
 実は先日、突然山嵜さんから軽井沢の
 件は取りやめたいと言われました』

すみれが小さく驚き、持ち上げたカップを
ソーサーに戻した。

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