桜が求めた愛の行方

勇斗は緊急の呼び出しを受けて、
ザ・トキオのセミスイートのドアを叩いた。

『遅いよ、野蛮人!』

中から出てきた男の顔を見て
拳を握りしめた。

『おまえ!いつの間に真島の携帯番号
 なんか手に入れてたんだ!
 いいか、例え弁護士だろうと個人情報…』

『人聞きの悪いこと言うの止めてくれる?
 僕は正当に彼と交換したんだから』

ニールは、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

『ふんっ、誰が信じるか!
 それよりさくらに関係する大事な話って
 なんだ?くだらない事だったら、おまえの
 上司に訴えてやるからな!』

勇斗はずかずかと中に入って、
上着をソファーに脱ぎ捨てて勝手に座った。

『なんだよその態度!ムカつく!
 今日のこれ、倍額払わせてやるからな!
 請求書を見て、僕の通常の一時間の
 相談料に驚くなよ!』

ニールは書類が入った封筒を持ってきて
向かいの椅子に座った。

『貴様が呼び出したくせに、この無駄な
 話し合いに、金を取るつもりなのか!?』

『それはあんたの態度次第だね』

『帰る!』

勇斗は立ち上がった。
馬鹿馬鹿しいにも程がある!
そもそも俺は何故こいつの呼び出しに
応じてしまったのか、訳がわからない!

『どうぞご勝手に!でも僕がさくらから
 預かっているものを見てからにした方が
 いいと思うけどね』

上着に手を通そうとして、またそれを
ソファーに投げつけた。

『ちくしょう!さっさとそれを見せろ!』

『そう簡単にはいかないと、わかるだろ?
 僕はクライアントとの守秘義務を
 破ってここにいるんだから』

『くそっ!なんなんだよ』

『まあ、落ち着いて。
 お互いさくらを大事に思っているという
 共通点を全面に出した上で、話し合い
 たいと思うが?』

『異論はない』

勇斗の怒りがようやく収まりかけた。

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