桜が求めた愛の行方

『では、これからする質問に文句を言わず
 正直に答えてくれ』

『はあ?』

『さくらを本気で愛してるか?』

『そんな事はおまえに……』

ニールの真剣な瞳を見て
言いかけた反論は途中で呑み込んだ。

『もちろん、愛してる』

『どんな真実がそこにあろうと
 彼女に対する愛は変わらない?』

『おまえは牧師にでもなったつもりか?
 なぜおまえに愛の誓いを……』

ニールはさっきよりも、真剣な顔で
答えを待っていた。

『ああーくそっ!
 変わらない!変わるものか!!』

さっきの怒りがぶり返してきた。

『さくらがおまえを拒否しても?』

『それは……
 彼女が本気で俺を拒否するならば』

『駄目だ!!それでも愛してると言え!』

ニールの剣幕に勇斗はたじろいだ。

『なんなんだよ!いい加減にしてくれ』

『頼む……さくらが全力で拒否しても
 彼女を離さないと言ってくれ』

今度は打って変わって悲痛な表情で
こちらに訴えている。

こいつ……法廷で戦っているつもりか?

『さくらが僅かでも嘘をついていると
 わかれば、何としてでも離さない』

納得した訳ではなさそうだが、ニールは
なんとか頷いた。

『藤木勇斗、君はどこまで真実に気がついて
 いるんだ?』

『真実?』

『ああ、真実だ』

二人はじっとお互いの瞳をにらみ合い
腹の探りあいをした。

先に視線を外したのは勇斗だった。

『さくらの本当の父親については、彼女の
 母親から直接聞いた』

『そうか……他には?君自身の事は?』

ニールの問いかけに、勇斗は驚いた。

『待てよ!!おまえはいったい何をどこまで
 知っているんだ?』

ニールはもう何も隠す必要はないと
悟ったのか静かに言った。

『全てさくらから聞いている』

『やはりさくらは……』

『どうなんだ?君自身の事は?』

『俺の父親はおそらく藤木要人だと思う』

『そうか……そこまで気がついたか』

『さくらは何故おまえに?』

『それはこれを作成するためだ』

ニールは封印された封筒から書類を出して
勇斗に渡した。

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