桜が求めた愛の行方
『『 真斗!!』』
『いつからそこにいた?!』
『最初からかな』
『最初から?話を聞いて驚かないのか?』
『まぁね、今さら新しい情報でもないし』
『なに?』
誠は驚きで胃がよじれそうになる。
誰が息子たちに全てを明らかにしたのだ?
『僕とさくねえは五年前に知っていたよ』
『なんだって?!』
驚く父と兄に、真斗は肩をすくめた。
『そして今朝、僕が全てを話したから
お母さんも知っている』
『美咲が!!』
もはや秘密は全て明らかにされてしまった。
それでも私達は家族だと、誠は必死に
自分に言い聞かせた。
『さくねえは今、お母さんと話をしている』
『どこで?!』
『藤木の墓だな……』
『そう』
勇斗がすかさず出ていこうとするのを
二人は止めた。
『勇斗!やめるんだ!
今はおまえが行かない方がいい』
『そうだよ、兄さん!
終わったら兄さんに連絡すると
お母さんは約束したから、心配しないで。
たぶんもうすぐだと思う』
『ちくしょう……』
うなだれる勇斗の肩に真斗は腕を回した。
『僕たちは幸せな家族だった。
そうでしょ、兄さん?』
『真斗……』
『さくねえはそれをわかってくれなかった。
要人おじさんが向けた愛情は本当は
兄さんのものだったのに、自分が横取り
したかの様に思っているんだ』
『馬鹿な!』
『それだけ深く愛されていたんだよ。
負い目に感じてしまうほどにね。
さくねえはそれに気づけないんだ。
兄さん、僕たちは幸せな家族だよね?』
真斗はもう一度聞いた。
兄さんにもそれをわからせる必要がある。
『ああ。俺たちは絵にかいたような
楽しくて幸せな家族だ』
それを聞いてホッとしたのは誠だった。
『うん。お母さんもそう言っていた。
だから、血の繋がりなんて重要じゃない
ってさくねえもきっとわかってくれるさ』
『どうして五年前に話してくれなかった?』
『五年前はそれぞれ自分の事で精一杯
だったからさ』
自分が兄とは半分しか血が繋がっていないと
受け止めながら、さくねえを支えていた
僕には、あれ以上周りを気にするなんて
出来なかった。
『ならばその後!最近だって…』
『真斗を責めるのは止めなさい!
責めを負わなければならないのは私だ』
『そうですね』
真斗は冷たく言い放った。
その言い方に誠はここ最近の真斗の
自分に対する態度の答えを見つけた。
『真斗……』
張り詰めた空気を破るように
勇斗の携帯が鳴った。