桜が求めた愛の行方

18.望んだ未来

平日の国際線搭乗ゲートは、各国へ旅立つ
最終便を待つ数人がいるだけで、
どこかひっそりとしていた。

アナウンスが最終搭乗案内を告げた。

さくらは必ずやって来る
真斗の言う事を信じるんだ

勇斗はたった五分が永遠のように
感じていた。

ガラガラとスーツケースを引く音に
勇斗は弾かれたように振り向いた。

『さくら!』

『勇斗!どうして?!』

『うちに帰ろう』

さくらは全身で否定するかのように
大きく首を振りながら、後退りした。

『逃げないでくれ』

『私は、返すことのできないたくさんの
 ものを、あなたから奪ってしまったの…』

勇斗は心の中で彼女を失うかもしれない
恐怖と必死に戦っていた。

『そんな事はないんだ。
 これまでの俺の人生を振り返っても
 要人さんの愛情が必要だった事はないよ
 俺には愛情を注いでくれる両親が
 ちゃんと傍にいてくれた。
 真実を知った今だって、要人さんが
 父親だったら、なんて思ってない』

勇斗はそう口にして初めて自分の中で、
要人さんが父親としてではなく、
憧れの人として胸にいることに気づいた。

反りが合わなくても、理解できなくても
自分の父親は佐伯 誠だ。
今ならはっきりそう言える。

『ゆうと……』

『おまえが知っている子供の俺は
 寂しそうだったか?
 要人さんを愛情を羨むような生活を
 しているように見えたか?』

さくらはうつむいたまま首を振った。

『でもっ…』

彼女はまだ一度も瞳を合わせてくれない。
瞳を見ればきっとそこに真実がある。
それは俺を否定するものではないはずだ。

『俺たちの結婚はそんなものだったのか?
 愛してると言ったのは嘘だったと?』

『それは……』

『さくら』

彼女が自分を見てくれるまで
辛抱強く待った。


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