桜が求めた愛の行方

『さくら?』

さくらは二人の間に少しの距離をとった。

瞳から溢れる涙を拭うこともせず、
恐る恐る自分のお腹に手を当てて
それを見下ろした。

赤ちゃん?
私と勇斗の赤ちゃん……

愛しさが一気に溢れだし、計り知れない
喜びと共に身体中を駆け抜けた。

唇がわなわなと震えて上手く言葉にならない
まま彼を見上げた。

『ああ』

勇斗がその想いを引き取って、
力強くうなずいた。

『あれだけ無防備に俺を求めておきながら
 全く気にしてなかったのか?』

一瞬瞳を大きく開いたあと、さくらは
真っ赤になった。

『俺とうちに帰ろう』

そう言われてもさくらは、まだ素直には
頷けなかった。

本当にこれでいいの?
願った通りの未来を望んでもかまわないの?

『膝まずいて懇願しなければダメか?』

『やめて!』

今にもそうしようとする彼に、さくらは
慌てて腕をつかんだ。

『さくら……もう足掻くのはやめよう。
 これは運命なんだよ。
 俺にはわかるよ、要人さんもきっと
 そう願っているはずだ』

『それ……』

『え?』

『どうして……』

パパの手紙にあった言葉と同じ事を
言う彼に、さくらはようやく観念した。

これでいいのよね?
パパ、私は彼と生きていく
それが私の幸せだから……
そして、それがパパの望みなのよね。



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