桜が求めた愛の行方
さくらは涙を拭って笑顔で勇斗を見た。

それは勇斗の心を鷲掴みにする、
見たこともない綺麗な笑顔だった。

ほらな、俺はさくらの笑顔には敵わない
って、ずっと前にわかっていたはずだ。

『ゆうと?』

勇斗はポケットからビロードの箱を
取り出してそれを開けた。

『それは……』

さくらは言葉を失った。
小さなダイヤモンドが花を形どり中心には
たぶんピンクダイヤモンドが飾られている。

『そもそもが間違いだったんだ』

家とか父親とか関係ない
俺はさくらを愛していて、ただ彼女を
自分だけのものにしたいんだ。

『何が?』

『初めからこうするべきだったんだよ』

さくらが手を出そうとしないので、
勇斗は焦れて、指輪を取って彼女を見た。

『きれい……』

愛らしい大きな瞳は喜びに溢れていた。

抵抗しない左手を持ち上げて薬指に
そっと嵌めて言った。

『結婚式をもう一度するつもりはないが
 全部最初からやり直そう。
 あっ、いや……おまえが結婚式も
 やり直したいと言うなら……』

最後まで言い終わらないうちに、
首に手が回され彼女に引き寄せられた。



『あなたが望んでくれるのなら』



彼女の柔らかな声が桜の花びらのように
勇斗の心にひらひらと舞い落ちた。



『私をもう一度、
 あなたの奥さんにしてください』



さくらが柔らかな唇を重ねると
勇斗はそれに応えて口付けを深め、
きつく彼女を抱きしめた。



『さくら、愛してる』


『愛してるわ、ゆうと』



Fin





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