桜が求めた愛の行方
公正で温厚な父の事は尊敬しているが、
闊達で情味のある要人に、
勇斗は、幼い頃から何故か惹かれた。
父は俺に何を望んでいたのかは、
いまだにつかめていない。
放任で自由にさせてくれるのとは違う。
だからと言って、
自分の考えを押し付けるでもない。
背中を見ても何も伝わってこなかった。
そんな見えない自分の道筋に
反抗期と呼ばれる年齢になった頃、
何もかもが闇雲に鬱陶しく感じてしまった。
外に出てもたいした気晴らしがなくて
悪友と危ない世界に片足を踏み入れていた
ことだってあった。
そんな時に何気なく寄ったこのホテルで
改装の準備に忙しくしている藤木要人に
久しぶりに会った。