桜が求めた愛の行方
勇斗は急に不機嫌になり口を聞かなくなった。

結婚を決めてから、昔とは違って
気遣いを見せてくれる彼に、
これなら何とか結婚生活を送れると
思っていたのに。

あてもなく歩きだした彼に
さくらは、仕方なくついていく。

やがて私に振り向くと、彼はニヤリと笑った。

『なっなに?』

『指輪は買う』

『でもっ』

『おまえの好きな店でいい。
 ただし俺が母さんに責められないものに
 してくれ』

それは宣言で命令で、私には拒否権がない。
彼が言い切るってことはそういうこと。
この暴君には、子供のころから充分
慣らされているわ。

まあ、彼の言い分もわからなくはない。

私もおばさまの目を誤魔化せる自信は
なかったし、あのプレッシャーには
そろそろ限界だったもの。

『わかったわ』

さくらは、仕方なく一番近くに見えた
デパートに入った。
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