桜が求めた愛の行方
『あそこだ』

勇斗が指差した先には
こじんまりとしているが、
白を基調とした外観で気品ある店が見えた。

ショーウインドーを見て、さくらは驚いた。

ウェディングドレスショップ?!

『どうして……?』

『おまえな、母さんの言いなりになるのも、
 大概にしろよ!』

『なんのこと?』

勇斗は昨夜、真斗に言われた事がどうしても
になって、ホテルの式場に行ってみた。

担当でないからわからないという、
対応してくれた係りの者に無理を言って
何とか自分達の衣装を出してもらった。

《こちらになります》

じゃらじゃらと音を鳴らして持ってこられた
それを見て時が止まった。

たっぷり1分は口を開けたままだっただろう。

考えてみれば、関西にある某女子歌劇団の
熱烈なファンである母がこのような衣装を
選択するのは、至極当然の事だ。
昔から息子をオス〇ルのように飾り立てては
ご満悦だったのだから。

あれを着て人前に立つくらいなら、
裸の王様になる方がまだましだ。

『ありえない……』

何とか言葉を発する事ができるように
なってから、丁重にお詫びしてキャンセル
するように言ってきた。

《ですがもうお時間が!!》と、
連絡を受けて慌てて来た担当者に、
必ず明日用意すると約束してきた。
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