桜が求めた愛の行方
『俺だ』

ドア越しの低い声。

ドアを開けると
今朝と同じ服の勇斗がいた。

『遅くまでお疲れ様』

『ああ。今日は悪かったな』

言われて、昼間の事を意識してしまい、
顔が見れずに、首を振った。

『気に入るのが見つかったか?』

うん、と頷いた。

『そうか。俺が見るのは反則?』

ううん、と首を振る。

『どした?』

顎を持ち上げられて、視線を合わされた。

『別に』

視線を反らして答えると、ふっと笑われた。

『さくら』

昼間と同じ甘い呼び掛けに身体が
びくっとなる。

『おまえ、わかりやすすぎだろ』

『何を言っ……んっ』

最後まで言う前に唇が重ねられた。
ゆっくり味わうように何度も何度も啄んで、
吐息ごと呑み込まれる。

『さくら……』

角度を変えて、唇が開けるように促されて
躊躇いがちに開くと、
すかさず口内に舌が入ってきた。

彼から与えられる甘い傷みに、
全身から力が抜けた。

キスだけでこんなに感じてしまうなんて。

腰を抱かれ、さらに強く引き寄せられると、
この3ヶ月ですっかり馴染んだ彼の香りに
頭がくらくらした。

『どうする?』

熱い吐息が耳にかかり、ぞくぞくするような色っぽい声で勇斗が問いかける。

何を?どうするの?
うまく考えられなくていやいやと首を振る。
すると首筋の感じる所に唇が落ちた。

『あっ…だめっ……』

『ほんとうに?』

クスッと笑って、また唇を奪われる。
今度は髪に差し込まれていた彼の右手が
胸に降りて服の上から形を確かめるように
揉まれる。
このままではもう立っていられない。

『…ねがいっ……もうっ…』

潤んだ瞳で彼を見ると、抱き上げられた。
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