桜が求めた愛の行方
頭の上に顎を乗せて瞳を閉じた。

あの愚かな恋の後から決して誉められるような女性関係はない。
結婚したいと思った女は、ブランド品と
同じようにしか俺を見ていなかった。

なぜもっと早く気付けなかったのだろう
彼女を満足させられるのは俺じゃなく
背景にあるものだと。

それからは、割り切った付き合いしか
してこなかった。
女性達が求めていたのは、
俺自身じゃない、俺のもつステイタスだ。

でもさくらは違う
もちろん彼女が金銭的に恵まれているのは
わかってる。
そうじゃないんだ。
さくらが求めているのは、
おそらく俺が求めていたものと同じ
……愛情だ。

だから、
あんなにも俺の浅はかな恋愛を応援し
俺の言った
《とりあえず》にこだわっているんだろう

さくらはどんな恋愛をしてきたのだろう?

誰かに恋をしたはずだ。
どんな奴が初めてを奪った?

胸の中に嫉妬の炎が燻りはじめ、
自然と抱き寄せる腕に力がこもる。

余計なことは考えない方がいい。
明後日には結婚するんだ。
もちろん離婚なんかしない。

もし、
まだそんな事を思っているならば……
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