桜が求めた愛の行方
彼は荒い息が整うと、ゆっくりと自身を
抜いて私を胸に抱き寄せた。

部屋中が信じられないくらいの幸せに
満たされている。

『いま何時だ?』

勇斗が時計を見ようと頭を動かして、
そのまま固まっている

『どうしたの?』

さくらが彼の視線を追った先には
ウェディングドレスがある。

皺にならないように、
京子さんがわざわざトルソーを持ってきて
準備してくれたもの。
考えるような顔を見て、小さな不安が過る。

『気に入らない?』

少し悲しくなって尋ねると、
それはそれは予想しない答えが返ってきた。

『いや、すごく良いけど………』

『いいけど?』

『胸、開きすぎじゃないか?』

渋い顔で振り返って言う勇斗に

さくらは久し振りに心の底から笑った。

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