桜が求めた愛の行方
『怒ってるの?』
心配するさくらを見て、
首を動かした彼は、違う返事が返した。
『おまえの好きにして良いって言ったのに』
『え?』
『インテリア、丸ごと俺の好みじゃないか』
『あっ、うん』
『ここだけじゃないな、他の部屋もか?』
『だってここはあなたの家だから』
最初からそのつもりだったもの。
私が出て行った後もあなたがここで
暮らしやすいように色々選んだの。
『おまえの家でもあったはずだが?』
『そうかも知れないけど……』
さくらは言葉を濁した。
『今は?』
『今?』
『2人の家だと思ってくれてるか?』
彼の言い方に胸が切なくなる。
『そう思いたい……』
素直に答えてしまい、はっとした。
『思いたいって……さくら、なあ、おまえ
何か隠してる事でもあるのか?』
『別にないわ』
さくらが今にも泣き出しそうな
切ない顔をするから、
勇斗はそれ以上の追及をやめた。
首の後ろに手を当てて、優しく唇を重ねる。
さっきとは違って、ただ唇を合わせるだけ
体温を与えて心まで熱が届くように
そっと離れて頭を胸に抱き寄せる。
『ゆうと……抱いて……』
声が震えている。
勇斗はそのまま黙って立ち上がると
左側の部屋を開けた。
家に入った時の荒々しい情熱は消えていた。
たださくらを癒したい、
不安を取り除いてやりたい、
どこまでも優しく触れて、彼女を満たした。