桜が求めた愛の行方
『まーくん』

『あの時さ……』

真斗が急に真剣な顔になる。

あの時……
私が地獄の入り口に立たされた時
まーくんが側にいたことを後悔しない日は
ない。

『実はホッとしたんだ』

『え?』

『兄さんはいつでもカリスマだろ?
 同じ兄弟なのに僕にはそれがなかった』

『そんなことないわ!』

真斗はカフェオレに口を付けて
ニッコリ笑った。

『うん、僕には僕の良さがあるって
 わかってるよ。
 でもさ、兄さんは違うだろ?』

『ええ、そうね』

まーくんが言いたい事はわかる。

周りを惹き付けてしまう魅力……
それは身に付けようとして出来るものでは
ない。

『同じ兄弟だから、僕は一生懸命
 追いつこうとしていた。
 でも何かそういうんじゃないって
 あの時、わかったんだ』

『まーくん……』

『だからあの場に一緒に居たことを
 さくねえが気にするのは、もうやめて。
 もし未だに知らなかったら、
 僕は今のような僕ではなかった……
 もっと足掻いて苦しんでいたよ』

さくらは何も言えなかった。
何度こうしてまーくんに助けられているかしら?

『あーもう!!昔から泣き虫なんだから!
 僕が老けて見えるのはさくねえの
 せいだよ、きっと!』

まーくんはよしよし、とか言って
ティッシュで涙を拭こうとする。

『何よ!!
 昔からあなたが生意気だからでしょ?!』

さくらはティッシュを奪って
泣きながら笑った。

『うっわーひどい顔!!』

『もおー』

『カフェオレおかわりね』

『はいはい』

さくらは、新しく淹れたカフェオレを
自分も飲みながら覚悟を決めた。
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