桜が求めた愛の行方
8.誤解
さくらが帰国し、ここで待ち合わせた日
からあっという間に季節が過ぎた。
成長を見続けてきた樹が、
今年もまた花を咲かせた温かな季節から
葉の木陰が涼しい季節に変わる。
ベイサイドホテルで企画している
ブライダルフェアの打ち合わせが
早めに終わったので、
勇斗は久しぶりにこのテラスに来た。
これまで自分の時間が出来れば、
必ずこのテラス席に来ていたのに、
今は時間が出来ればさくらに会いたいと
思ってしまうのだから、仕方ない。
今は何をしているだろうか?
携帯を出した自分に苦笑いした。
まったく、溺れてるな。
でもそれも悪くない。
今朝のさくらの笑顔を思い出して、
自然と頬が緩む。
カップを口に運び、ふとテラスの入り口を
見た瞬間、幸せな気持ちで飲んだ
コーヒーが、苦く不味い味に変わった。
『やっぱりここにいたわ!』
『美那《みな》、おまえ何で……』
三年前に俺を捨てた女。
彼女を愛したのは葬り去った過去だ。
胸の痛みも苦しみもすべては過去のこと……
今さらどうして、俺の前に現れた?
『ここに来れば絶対に会えると思ったわ』
『今さら何の用だ?』
『そんな冷たい言い方しなくても
いいじゃない』
『冷たい?どの口がそれを言う?』
顔を見るのも嫌で、吐き捨てるように言って立ち上がった。