桜が求めた愛の行方
やっぱりね、やっぱり……

さくらは勇斗に気づかれないように
テラスを出ると、一目散に駆け出した。

苦しくて悲しくて、
どうにかなってしまいそうな身体と心を
必死で隠して駐車場へ急ぐ。

大切な人の人生に割り込んでしまった
運命を変えてしまったんだわ……

やはり彼女は勇斗を一方的に捨てた
酷い女なんかじゃなかった
それどころか、彼を本気で愛していた
それに……あぁなんて事……

勇斗が《本気で愛していた》
と言う言葉を聞いて、
自分は彼に《愛してる》という言葉を
もらっていないと気づいてしまった。

どうしたらいいの?

高ぶる感情を押さえられず泣き崩れそうになって、その場にしゃがみ込んだ。

『もう少し頑張って』

ものすごい力で腕を引かれて、
近くのエレベーターに押し込められた。
誰もいないとわかると腕の中に
閉じ込められる。

『どうして?』

『いいから黙って』

エレベーターが止まり、そのまま歩くと
セミスイートの扉が開いた。
< 96 / 249 >

この作品をシェア

pagetop