花嫁に読むラブレター

 あ、とマイアが呟いた。

 そういえば、以前にユンが言っていた。ユンもユンのお母さんも、ミリア姉さんのお店にはよく行っていると。湖でマイアがユンと出会う前から、ユンはマイアの存在を知っていた、とも。

 その頃からもしかして、自分の行動を見られていたのだろうか。誰かに見られているなんてこれっぽっちも想像していなかった。大口をあけて大笑いしていなかっただろうか。ふてぶてしい態度でいなかっただろうか。自分の言動や行動が荒いのは、マイア自身が一番よく知っている。怒りっぽくて、すぐに怒鳴り散らしてミリア姉さんにため息をつかせたときのことを思い出し、顔が火照った。

「あの、お義母さ――」

「あ、駄目よ。だめだめ。今度『お義母さん』って呼んだらお仕置きよ。私のことはフィーネ、と呼んでちょうだい。お義父さまもだめよ? クラウスって呼んであげてちょうだいね」

 言いながら、マイアの返事を待たずに手を取り歩き出した。

 握った手は少し乾燥してカサカサしていたけれど、暖かくて柔らかい温度はユンのものとそっくりだった。

 横目でちらりとユンを窺うと、嬉しそうに目元を緩ませていた彼と目が合う。

 今日から、この人が二人目の母なのだ。

 そう強く実感したら、胸が熱くなり自然と笑みがこぼれた。
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