花嫁に読むラブレター
ユンはゆっくりとマイアの隣に歩み寄り、覗くように窓の外を見た。
「本当だ。満月の夜ってなんだか得した気分になるよね」
マイアが大きく頷くと、ユンが微笑む。
「この部屋、気に入ってくれた?」
「ええ、もちろんよ!」
「よかった。なるべく一人でいても寂しくないように、景色が一番きれいに眺められる部屋を選んだんだ」
「一人? なんで? ユンも一緒にこの部屋で過ごすんじゃないの?」
マイアは小首を傾げて、改めて部屋の中を見渡した。
窓に面した大きな机など、寄木細工が心地よい調度品の数々。一人で眠りには大きすぎるベッドは、今すぐに体をうずめたくなるほどふわふわしている。燭台の光が照らす室内は、明るいとは言い難いものだったが、マイアにはちょうどよかった。窓の外から差し込むほんのわずかな光と重なり、なんともいえない穏やかな気持ちにさせてくれる。部屋の中にあるものは、きっと想像もつかないほど高価なものなのだろう。だが、どことなく孤児の施設で暮らしていたときの気持ちを思い出させてくれる懐かしさがこの部屋にはあった。
しかし、どう見渡しても一人で過ごす広さではない。