花嫁に読むラブレター

 レナータの行動を、ユンに――フィーネに伝えていさめるのは簡単だ。けれど、マイアは決してそれだけはしたくなかった。

 昔のマイアならば、きっとユンに言って助けを求めただろう。一瞬で解決するはずだ。もしかしたら、二度とレナータとは顔を合わせなくてすむように、解職を命じたかもしれない。それができたら、マイアの心はどれだけ晴れただろう。レナータの顔を見るたびに、胃の中に虫が這いずり回っているような、不愉快な気持ちともおさらばできるのだから。

 しかし、レナータを貶めるような行為だとも思った。マイア自身に起こったことを他人に任せて解決しようなんて、それこそ虫唾が走る。

 マイアが自分で解決しないまま、レナータと会わなくなったら、きっと恥ずかしさだけが残る。ユンの顔を見るたび、フィーネやクラウスの顔を見るたび後ろめたさに襲われるだろう。

 マイアは結局、自分の手では何もできない子供なのだ、と。

 それだけは、嫌だった。

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