花嫁に読むラブレター
鏡越しのマイアを見つめるフィーネの目に、優しさが浮かんだ。しかし、次の瞬間、その笑みの中に寂しさが混じる。
「だからね、たまには甘えてもいいのよ」
マイアの困惑した視線を受け止めながら頷き、フィーネは続ける。
「困っていることがあれば、相談してくれてもいいのよ」
何を言われているのか、マイアにはすぐわかった。
レナータとの関係を、少なからず何か感じているのだろう。
はっきりと、言いなさい、と言わないのはフィーネなりの優しさであり、そして、どちらの味方をすることもできない心苦しさの表れかもしれない。
喉元まで出かけた言葉を、飲み込んだ。
言ってしまいたい。
毎日、寝起きを共にしている者同士の不穏な空気は、嫌でも気づくだろう。けれど、それが何であるのかはきっと知らない。レナータが、マイアの部屋に忍び込み手紙を勝手に読み漁ったことも、無断で持ち出し燃やしたことも。
苦しさと、フィーネの優しさが胸に沁みて、目尻が熱くなった。
言って楽になることは簡単だ。
けれど、今ここでフィーネに告げることは、だからこそできないと思った。
「――困ってることはないわ。敢えてあるとすれば、ユンの帰りが遅いことかしら」
努めて明るく、笑顔で言うマイアの頭を抱きしめると、フィーネは熱い吐息で囁いた。
「そう――そうね。優しい子……。でもいいお知らせよ。ユンのお仕事、今日は半日だけだから、明日のお昼には一緒にいられるわね」
マイアは心に温かいものが浮かんでくるのを感じながら、笑顔で頷いた。