花嫁に読むラブレター
その日の夜、マイアはなかなか寝つけなかった。
寒さに震える身体を毛布に滑り込ませても、骨に響くような深い冷えはなくならない。隣にいるはずの夫の姿もなく、それだけで寒さが身に沁みた。
一度目が冴えてしまえば、何度目を閉じてもぽっかり浮かぶ闇を見つめているようで、いっこうに眠気はおりてこない。それどころか、眠ろうと必死になればなるほど、爛々と頭が目覚めた。
仕方なしに眠る努力を諦め、ため息をつく。
ユンが帰ってくると聞き、気が昂っているのだろうか。
ここのところ、酷寒が続いているせいで流行り風邪に罹る者が多い。城内で医師として働くクラウスとユンは、当たり前のように帰宅できる日数が減った。今では週に一度帰ってこればいいほうだ。それでも、クラウスよりユンのほうが労務は優しい。もう一か月近く顔を見ていないクラウスのことを考えると、ふとした瞬間に寂しそうに窓の外を眺めるフィーネを思い出し胸が痛んだ。明日、家事のことは気にせず二人でゆっくりしなさい、と穏やかな面持ちで言ったとき、フィーネはどんな心境だったのだろう。