花嫁に読むラブレター
マイアは毛布を体に巻きつけたまま、寝返りをうった。
目を閉じると、ぼんやりとユンの顔が脳裏に浮かぶ。出会ったころの、まだ手を握ることすら慣れていない初々しいユンから、つい先週、ともに街へ行きミリア姉さんと何気ない会話を楽しんでいたときのユンまで、実に様々なユンが頭の中で笑った。
明日は、どのようにして過ごそうか。
朝早く起きて、フィーネと一緒にケーキを焼くのもいいかもしれない。お酒を嗜まないユンは、ときにマイアすら驚くほど甘党だ。
フィーネが淹れたハーブティーに、二杯、三杯、四杯――と、さすがに砂糖を入れ続けるユンに、フィーネが珍しく渋い表情で窘めていたのは一度や二度ではない。そのたびに、ユンは悪びれもなく照れ笑いを浮かべるだけだった。その舌で、さらにケーキや蜜漬けの果物やらを食べるのだから驚きだ。
お城では、どのような食生活をしているのだろうか。もしかしたら、ユンの大好きな甘いものは食べられないかもしれない。だとしたら、やはりフィーネに頼んで一緒にケーキを焼くのがいいように思えた。ユンは蜂蜜が大好きだから、生地にたっぷり練り込んで、さらに蜜漬けの果物を盛りつけて食べるのがいいかしら。砂糖と一緒に泡立てたクリームを添えれば完璧ね――。
瞼の裏に、嬉しそうに声をあげながら、美味しいね、と囁くユンが微笑む。
そんなことを考えながら、マイアは知らぬ間に眠りに落ちていった。