花嫁に読むラブレター


 部屋を叩く音で、マイアは目覚めた。

 ぼんやりと目を開けると、窓から差し込む柔らかい光が室内を照らしているのがわかった。

 珍しく、雪の降っていない明るい朝である。

 マイアは毛布から顔だけを少し覗かせたまま、眩しさに目を細めた。

 朝の漂う清澄さは、冬が一番好きだった。身を刺すような寒ささえなければ、今すぐにでも庭園に出て、肺が破裂してしまうほどの空気を吸い込むのに。まだ孤児のみんなと暮らしていたときは、マリーおばさんが例外なく全員を叩き起こし、まだ日が昇り切っていない薄暗い寒空の下で揃って体操したものだ。初めは寒さで手足を動かせないでいたマイアも、次第に体が温まってくると、朝のしんと冷えた空気がとても心地よくなる。頬に触れるナイフのような冷たさも忘れて、思いっきり深呼吸したときの空気は今でも忘れられない。

 しかし、早朝に外に出る習慣がなくなった今、曇ったガラス窓を見るだけで体が震えた。空気を吸い込んだときの気持ちよさよりも、暖かい毛布から与えられる気持ちよさのほうが今はいい。
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